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夜の帳が下りた街は、一斉に点灯し始めたネオンで景色を一変、夜の華やかさを見せた。
治安が良いと言えば首を縦に振るほどでもなく、悪いと言うほどでもない。荒れくれに混ざり、会社帰りのスーツ姿がよく目立つ。駅に向かう者、店に入るもの様々だ。居酒屋、料亭と並んでクラブやラウンジ。風俗など様々である。
「来て下さったのですね」
「一応、あんな電話くれたんで」
黒いベロアは神楽である。見ればマンションの屋上。見慣れぬ男と一緒であった。
先日、雅長がオフィスで対談中、別室で書類を整理する神楽の携帯へ、彼の電波は届いた。仕事用の携帯だ。依頼主からだろうが、その時点で神楽は依頼を受けていなかった。番号は依頼が成立後に依頼主に教えている。知らない番号から掛かってくる事はない。あっても間違い電話くらいだろう。
放っていた神楽だったが、いつまで経っても鳴り止まぬそれに、親切心を伴って電話に出た。合ってると思って掛けて来ているのなら、間違いに気付いて欲しかった。
そして聞こえて来たのは、自分の名前を知る誰か。思わず切りそうになった神楽だが、電話の向こうにいる者に会ってくれと願い下げられた。しかし何故番号を知っているのか。そこでようやく気付くのである。
──同じ力に。
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