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「力の持ち主は、お前だとばかり思っていたが……どうやら見当違いのようだ」
「はぁ!?」
ガクンと体が下へ落ちて行こうとするのが分かった。まさか……。落とされる? だが、神楽の体は再び浮き上がり、フェンスの向こう側へと降ろされた。
「……ぐっ、ゲホッ」
フェンスに寄りかかる神楽の前に、見覚えのない背中が立っていた。
「何してんの、ウリエ……じゃ、ないわね。冬真」
スウェットにダウンジャケット。もう一人は細身のジーンズにパーカー姿であった。どう見てもそこらの若者にしか見えない。
「見て分かるだろう。悪魔討伐をしている最中だ」
「……へぇ、これが悪魔、ね」
「何が言いたい?」
疑問と共に、男が纏っていた殺意を解いた。
「おい」
呆然と事態を見つめる神楽の耳に、男の声が届いた。差し出された手を受け取ると、その細い腕のどこに力があるのか、片手で神楽を持ち上げた。
「本当にあんたか。あの莫大な魔力の主は」
「……魔力?」
何だ? さっきから何を言ってやがるんだ。この三人は。二人は何処から来た? 日本人なのに、カタカナの名前を出しても分かんねえ。
神楽は混乱する頭を抱え、ふらつく足を、フェンスに預ける事でどうにか立っていた。
「この様子じゃ記憶はないみたい」
派手な女が、神楽を見ながらそう言った。そう言えば、あの危険な男も、記憶について何やら口走っていた。
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