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それは、想像したよりも、優しく丁寧な言葉使いだと感じた。
その言葉に車内の悲壮な雰囲気も多少緩む。
今まで、硬直し成り行きを見守っていた、教師の坂本は、バスのフロント硝子から見えるローブの男から聞こえる声を聞き、今にも止まりそうだった浅い呼吸を改めて、一度大きく深呼吸し直す。
対話すべきか、抵抗すべきか。
どちらが正解かわからない。わかるのは只の普通である教師の自分が突拍子もない状況に巻き込まれた事だけだ。
「おやおや。英雄方はシャイなんでしょうか?なかなか出てきてくれないようですな。」
今まで、周りから聞こえてきた歓声がローブの男の声で笑い声に変わる。
坂本は苛つく。なんで私がこんな目に合わなければならない。
つい立ち上がり、フロント硝子に右手をつけて、ローブの男を睨む。
「ここは何なんだ!?お前たちは誰だ?何が目的なんだ?」
生徒たちの視線が自分の背中に向けられているのが、わかる。
バスの車内で、自分の他で大人であるバスの運転手とバスガイドをチラリと見る。
バスガイドは、一段下の出入口の所で小さく丸まり、此方を見ている、運転手は、頭を打ったのか未だ意識を失っているようだ。
頼れるのは、自分しか居ないのか。坂本は小さく舌打ちをして、再度ローブの男を見る。
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