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春は希望の季節だなんて誰が言い出したのだろうか。
田舎のこの村には四月になると花が咲く。
色とりどりの花がなだらかな丘にカラフルな絨毯のように。
その花に見送らて、夫は戦争に行く。
もう、一度行っているのに、またあの地獄に戻る。
去年、夫は戦争から帰ってきた。
足を大怪我して運ばれてきた。
あの時の驚きと悲しみと、喜びは何だったのだろう。
また不安な生活が始まる。
怪我が治らないことをこの一年間望み続けた。
治る前に戦争が終わることを何度願ったか。
それでも結婚したて、二十三歳という若い体は一年で重体から歩けるまでに回復した。
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