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「悟志」
「任せろ」
悟志は信二の鞄から筆箱を取り出し――
「……うらぁぁぁっ!」
野球選手も真っ青のフォームで、それを投げ付けた。
決して落ちることなく、重量から解放されたかのように、筆箱は宙を滑り、信二の額にヒット。
「アレキサンドリアッ!」
「た、助かったぞ向井……
お前の欠点、免除してやるわ」
「っしゃあッ!
役得役得」
「ほら、入れ」
そうして、さっきの声の主――知佳は教室に入ってきた。
クラスの面々は急いで席に戻り、優雅な空気を纏いながら教卓前に立った知佳を見る。
「オーストラリアから来ました。
稜宮 知佳です。
姉妹と母は日本に来ていないので、一人暮らしをしています。
学校については分からないことばかりなので、ご教授頂ければと思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします」
その堂々たる自己紹介と口調に、クラスのみんなは肝胆といった表情だ。
拍手されながら、黒川先生の指示で知佳は空いた席に座った。
「んー、やっぱり知佳ちゃん、かなーり頭良さそうですね……
これは不動の学年トップが動きそうです」
「そうね。
さすがの悠樹も、知佳には負けるんじゃないの?」
「はは……心配してくれてるの?
ありがとう、灰音」
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