第1話

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「悟志」 「任せろ」 悟志は信二の鞄から筆箱を取り出し―― 「……うらぁぁぁっ!」 野球選手も真っ青のフォームで、それを投げ付けた。 決して落ちることなく、重量から解放されたかのように、筆箱は宙を滑り、信二の額にヒット。 「アレキサンドリアッ!」 「た、助かったぞ向井…… お前の欠点、免除してやるわ」 「っしゃあッ! 役得役得」 「ほら、入れ」 そうして、さっきの声の主――知佳は教室に入ってきた。 クラスの面々は急いで席に戻り、優雅な空気を纏いながら教卓前に立った知佳を見る。 「オーストラリアから来ました。 稜宮 知佳です。 姉妹と母は日本に来ていないので、一人暮らしをしています。 学校については分からないことばかりなので、ご教授頂ければと思います。 どうぞ、よろしくお願いいたします」 その堂々たる自己紹介と口調に、クラスのみんなは肝胆といった表情だ。 拍手されながら、黒川先生の指示で知佳は空いた席に座った。 「んー、やっぱり知佳ちゃん、かなーり頭良さそうですね…… これは不動の学年トップが動きそうです」 「そうね。 さすがの悠樹も、知佳には負けるんじゃないの?」 「はは……心配してくれてるの? ありがとう、灰音」
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