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信二を撒く為のウソ、か。
引っかかってしまっていた俺も情けない奴だなぁ。
そんな屋内プール『スパヘヴン』なるこの施設は、洒落たリゾート風の建物で、海沿いに立てられていた。
その海自体は、あまりキレイでない海で泳いだ経験の無い俺には遠慮したいものだけど、ロケーション的には良い場所って言えるんだろうな。
肝心の施設は、巨費を投じられたであろう優美なデザインと、建てられたばかりの美しさの両立が際立つ、期待を損なわせない素晴らしいつくりだ。
「それじゃ、早速……「あ、あの……」
俺が意気込んで「入ろうか!」と言おうとした時、いいタイミングで後ろから誰かに話しかけられた。
振り向くと、おどおどした、可愛らしい顔立ちの男の子が立っていた。
同年代、くらいかな?
「す、すみません……急に声かけて」
「いや、気にしてないよ。
何かな?」
驚くほど謙虚、というよりは小動物みたいな子だな。
「ここに招待された人ですか?」
「うん、そうだけど……」
「え、えっと、名乗り遅れました。
ぼく、ここの支配人の息子の、与倉 万里耶(よくら まりや)です」
「えっ」
ちらっと流華の方を見て見るけど、首を横に振られた。
知らなかったみたいだな。
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