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「そうなんだ。
俺たちは、こっちの奏 流華のお婆さん経由で招待してもらったんだよ」
「き、聞いています。
待っていました」
彼、万里耶は俺たちを招き入れ、エントランスまで通してくれた。
先行招待だから、人はかなり少ないな。
鑑賞用の南洋植物が印象的な、広々とした空間が広がる。
「うわー……広いですねー」
「そうね。
これなら、客も多く来そう」
「ちょうど大都市の間っていう便利な場所にあるから、そういう意味でも来る人は多そうね」
「……ん、来たか」
各々の考えを述べていると、奥の階段から誰かが下りてきた。
長く艶やかな黒髪、そしてだるそうな目。
手には何やら難解そうな分厚い本が握られている。
「あ……紗奈」
「万里耶。
彼らが?」
「うん。
奏さんのお孫さんとそのご友人たちだよ」
「ふーん」
紗奈と呼ばれた少女は、まっすぐ俺たちの方へ向かってきたかと思うと、ずいっと一歩前に出てきて俺の顔をじろじろと観察し始めた。
さらには、顔に触れてきて――
「えっ……」
「ちょ、紗奈……失礼だよぉ」
「待った待ったー!」
そこで割り込んできたのが、桜花。
御冠のようだ。
「何よ!登場するなりいきなり人の彼氏に!」
「なんだ。
心配する必要があるほど薄い情愛なのか?」
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