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俺――神木 悠樹(かみき ゆうき)は、小さな頃からの片思いを、その日実らせた。
季節外れの桜舞う中、その花に負けない美しい髪を靡かせ、彼女――天織 桜花(あまおり おうか)は、俺の告白を、泣きながら受け入れてくれた。
全て順風満帆に進んだとは言えない恋だったけど、やっと結ばれたんだ。
……そう思った。
だけど、告白したその日、桜花の口から出た言葉は――
「悠樹……黙っててごめんね。
私、1週間後にオーストラリアに留学するの」
呆気にとられる俺を見て、少し辛そうに桜花は続けた。
「私も今日、悠樹に告白するつもりだったの。
その前に留学のことを言ったら、付き合ってくれないと思ったから……」
幼なじみだから、よく知ってるんだ。
英語が好きだから桜花は昔から、外国で英語を話したいって、口癖のように言っていた。
言わば、これは桜花の夢。
「……俺は、桜花の夢を応援するよ」
「悠樹?」
「もちろん、寂しいよ。
だけど、桜花のしたいことを邪魔する足枷になりたくない。
俺は、笑って桜花を見送って、笑って桜花の帰りを待ってるよ」
それは、俺の必死の我慢。
きっと、桜花も同じ想いでいてくれているはずだ。
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