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「……ありがとう、悠樹」
そして、出立の日は、無情にもあっという間に訪れた。
その日は、明るい別れを迎え入れるかのように、晴れ渡った晴天。
だけど……もちろん、俺たちの表情は明るくなかった。
空港に着いたら、瑠璃たちは俺と桜花を2人きりにしてくれた。
「ねえ悠樹」
「なに?」
「これ」
椅子に座って、2人で窓から見える空を見ていると、桜花がそっと俺の手に何かを握らせた。
ひんやりとした感覚を覚え、桜花を見ると、静かに頷いた。
了解を得たところでそっと開くと、そこには小さな銀の飾りが。
「ピアス?」
「私のとお揃い」
桜花の耳には、穴が開いてない。
もう片方の手には、なるほど同じ……といっても、左右対称のピアスがあった。
ということは、これから開けるのか。
「あのネックレスは、片思いしてたときのもの。
このピアスは、離れててもお互いに愛しあってるって印」
『愛し合う』という表現が恥ずかしかったのか、桜花は顔をふいっと反らした。
「……そ、それが私だと思っててよね!
浮気なんかしたら許さないんだから!」
「残念。
俺の目はあまり優秀じゃなくてね。
もう、桜花以外誰も可愛く映ってくれないんだよね」
「……バカ」
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