第1話

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「……ありがとう、悠樹」 そして、出立の日は、無情にもあっという間に訪れた。 その日は、明るい別れを迎え入れるかのように、晴れ渡った晴天。 だけど……もちろん、俺たちの表情は明るくなかった。 空港に着いたら、瑠璃たちは俺と桜花を2人きりにしてくれた。 「ねえ悠樹」 「なに?」 「これ」 椅子に座って、2人で窓から見える空を見ていると、桜花がそっと俺の手に何かを握らせた。 ひんやりとした感覚を覚え、桜花を見ると、静かに頷いた。 了解を得たところでそっと開くと、そこには小さな銀の飾りが。 「ピアス?」 「私のとお揃い」 桜花の耳には、穴が開いてない。 もう片方の手には、なるほど同じ……といっても、左右対称のピアスがあった。 ということは、これから開けるのか。 「あのネックレスは、片思いしてたときのもの。 このピアスは、離れててもお互いに愛しあってるって印」 『愛し合う』という表現が恥ずかしかったのか、桜花は顔をふいっと反らした。 「……そ、それが私だと思っててよね! 浮気なんかしたら許さないんだから!」 「残念。 俺の目はあまり優秀じゃなくてね。 もう、桜花以外誰も可愛く映ってくれないんだよね」 「……バカ」
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