第1話

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背を向けて呟いた桜花の肩は、小さく震えていた。 それが、たまらなく愛しくて。 俺は桜花を後ろから抱き締めた。 「……桜花、愛してる」 「バカ……本当にバカ…… そんな嬉しいこと言われたら、行きたくなくなっちゃうでしょ……?」 そんな嬉しいこと言われたら、行ってほしくなくなっちゃうよ。 けど、桜花の為に我慢するときなんだ。 「……そうだね」 後ろを振り返ると、瑠璃たちの姿は無かった。 ……本当に気が効くよ、みんな。 ありがとう。 「そろそろ時間……だね」 「うん」 搭乗時間まで、あと3分も無い。 なんて短い時間なんだ。 この短い時間が過ぎれば、桜花に再び会うまでの長い時間が横たわっているというのに…… 「ねえ……悠樹。 キスして」 もう何度もしたというのに、始めて唇を重ね合わした日と同じように、桜花は頬を染めながら上目遣いで言った。 もう、可愛すぎて可愛すぎて…… 俺もかなり顔赤いと思う。 「……大好き」 「バカ……」 桜花の柔らかな唇に、俺のが重なる。 甘い……本当に甘いキス。 身を任せていると、溶けてしまいそうなくらいに。 「……今日は少し長かった」 「ごめん。足りない」 「えっ……も、もう。 しょうがないわね……」 そんなこと言いながら、桜花も嬉しそう。 内心苦笑しながら、再びキスをする。
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