プロローグと言う名の痛い回想

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ローデリック=アルファロメオ=シルヴィア=ヨハネス=ハーネット,フィフス=アール=オブ=ユリウス(第五代ユリウス領伯爵)という本人すらたまにとちる不治の病の如く長ったらしい名前の男が、悪童リックと呼ばれていたことを、たぶん多くの者が知らないだろう。 その昔、ハーネット家公爵子息兼七代目ユリウス領伯爵なんて葬式の空気の如く重い肩書きなんてなく、俺がまだガキだった頃の話。首都から馬で七日程離れた農村に、母と二人で住んでいた。 そこは農村と言う環境ではよくあるように、魔物が出る深い森に閉ざされた陸の孤島。稀に奇特な商人やジプシーが訪れるが、基本自給自足。当時骨肉の争いの渦中にあったハーネット家の血を引く幼い子息を隠すのにこれほど素晴らしい場所はない。 住民に混じって土いじりをする珍しい領主、グレイシー男爵の指導のもと、村は近隣にあるまじき豊かな暮らしをしていた。 働かざるもの食うべからず。大人たちは勤勉で毎日のように畑を耕す。構ってもらえず不貞腐れた子供たちが、大自然と聞こえはいいが何もない田舎でやることと言えば決まりきっている。 洗濯女の桶にカエルを忍び込ませ、村長の家に小麦粉をぶちまけ、牧師の説教のカンニングペーパーに卑猥な言葉を書き込むなんてほんの一例。 子供たちは今日もピクシーの如く悪戯に励むのである。
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