プロローグと言う名の痛い回想

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「大佐ぁー!」 「リック、曹長じゃなかった?」 「兵長よ」 「大尉な」 「彼は非業の死を遂げ大佐に昇格したのだ」 文句を言いたげな部下を無視し、宿敵を睨み付ける。 「おのれ、またしてもお前か! いつもいつも崇高な任務を邪魔しやがって!」 「何が崇高だ、腐ったリンゴ並みにくだらんな」 奴は腰の木刀を抜きつつ、鼻で笑いやがった。 「今日という今日は許さん。かかれ、野郎ども!」 「らじ」 応答の声は悲鳴に変わった。どこに隠れていたのか、淑女たちが駆け足で参上し、腕に下げた籠から小さな木片を投げた。 「伏兵? 手榴弾、だと?」 単なる木片じゃな痛っ、胡桃の殻痛っ。顔をピンポイントで狙って痛っ。手で覆ったけど、痛っ! 「落ち着いて態勢を立て直せ、奴を警戒しろ!」 しかしパニックに陥る部下たちに俺の声は届かず、木刀を振り回すたった一人の襲撃者に次々にぶちのめされていく。 しなやかな四肢から繰り出される軽やかな剣戟。風に舞う明るい栗色の髪は日光に透けて金に輝く。煌めく翡翠の双眸に自分に危機が迫っているというのに見惚れてしまった。 部下たちを粗方捩じ伏せた戦乙女は、獲物を追い詰める獅子の如く悠然と歩いて来る。 我に返った俺はせめてもの抵抗に突進するフリして足払いをかけるも、人間離れした高さに跳躍したやつは俺の頭上を飛び越え、何が何だか分らぬ間に後頭部に鉄槌が落ち、視界が暗転した。
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