―吸血鬼から学んだこと―

3/5
73人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
町は寂しいものだった。 民家は減り、商店すらほとんど見当たらない。 空き地が増え、昔見覚えのあった建物の姿すら目につくことはない。 変わり果てた町の現状を知って、僕は自分を戒めた。 原因を作ったのは僕のせいだからだ。 あの事件を境に、町は変わっていったのだろう。 連中は町を守ろうとして、僕が真っ向から抵抗したために、招いた結果だった。 高校二年生だった頃から変わらない自分の姿に、未来へタイムスリップしたような感覚を、味わっていた。 僕にはもう一つ行く場所があった。 美怜との思い出も深い、あそこだ。 着くと相変わらずそこは廃屋のまま、原形を留めていた。 変わらない。あの頃のまま。 僕は無償に感極まり、溢れてくる涙を、なかなか止めることが出来なかった。 美怜との場所がまだ残っている―― それだけで、心が満たされていく。 階段を降り、立て付けの悪くなったぼろい木製の扉を蹴り破る。 室内は相変わらず饐えた臭いが充満していて、埃っぽかった。 あの惨劇の跡はあちらこちらに血痕として残っているが、血の臭いはしない。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!