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町は寂しいものだった。
民家は減り、商店すらほとんど見当たらない。
空き地が増え、昔見覚えのあった建物の姿すら目につくことはない。
変わり果てた町の現状を知って、僕は自分を戒めた。
原因を作ったのは僕のせいだからだ。
あの事件を境に、町は変わっていったのだろう。
連中は町を守ろうとして、僕が真っ向から抵抗したために、招いた結果だった。
高校二年生だった頃から変わらない自分の姿に、未来へタイムスリップしたような感覚を、味わっていた。
僕にはもう一つ行く場所があった。
美怜との思い出も深い、あそこだ。
着くと相変わらずそこは廃屋のまま、原形を留めていた。
変わらない。あの頃のまま。
僕は無償に感極まり、溢れてくる涙を、なかなか止めることが出来なかった。
美怜との場所がまだ残っている――
それだけで、心が満たされていく。
階段を降り、立て付けの悪くなったぼろい木製の扉を蹴り破る。
室内は相変わらず饐えた臭いが充満していて、埃っぽかった。
あの惨劇の跡はあちらこちらに血痕として残っているが、血の臭いはしない。
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