73人が本棚に入れています
本棚に追加
吸血鬼なんて熊が人里に下りてきたくらいの感覚でしか、今は扱われていない。
少し前までは、他国から来た吸血鬼がある県で騒動を起こし、吸血鬼を増加させた事件が話題になった。
それも今では鎮静化されたとも言われているし、ここ最近吸血鬼の話題は途絶え気味になっていたのだ。
警察側も吸血鬼撲滅対策を掲げ、専門の吸血鬼狩り部隊を各県に派遣している。
この町も完全に安全というわけでもないが、そういった治安に守られている。
吸血鬼なんてこれからどんどん少なくなっていき、いずれはニュースにも取り上げられなくなっていく。
僕は所詮そんなものだと思っていた。
「強がるなよ。――実際出くわしたら、俺だったら逃げるね。一目散に。噛まれてお仲間は御免だろ」
「……逃げられないよ。あいつら早いし、その前に怖くて動けなくなる」
「なんだ……やっぱお前も怖いんじゃん。――てか、直接吸血鬼に遭遇したことあるみたいな口ぶりだな」
「あ、あるわけないだろっ……」
不機嫌に僕が鞄を締めた様子を見て、修二が「怒ることないだろ。冗談だって」と、宥めてくる。
呆れたように溜め息をつく修二。溜め息をつきたいのは僕のほうだ。
最初のコメントを投稿しよう!