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そのことに少女は怪訝そうな表情で睨み付けてくる。
「何かおかしいの?」
「学校に行くには制服を着用しなきゃだめなんです」
悠一はとりあえずこの少女が世間知らずだということを一瞬で理解した。
「へぇ、そうなんだ。てことでお願い!」
少女は着てる服云々のことはスルーして頭の上で手を合わせお願いしてきた。
周りがざわつき始める。
「わかったわかった! んじゃさっさと行くぞ! 電車に間に合わなくなるから」
「やった! ありがとう!」
少女は喜びのあまりその場をピョンピョン跳ねるが悠一は腕を掴み強引に歩いていく。
しばらく歩いていると少女に声をかけられた。
「名前は?」
「は?」
「だから、まだ聞いてなかったけど名前教えてよ」
少女は悠一の横を歩きながら脇腹をベシベシつついてきた。
「芹沢悠一だよ……」
悠一は周りの視線を気にしながらも簡単に自己紹介をする。
「芹沢って……。あの芹沢流古武術の?」
「まぁ、そうなる」
悠一は自分の家の古武術がそれなりに知られているのを初めて知った。
「私は柊瑞希って言うんだ!」
「……柊?」
悠一は柊という名字に聞き覚えがあった。が、柊なんかどこにでもいそうなので考えることを止めた。
お互いに自己紹介を済ませてすぐに駅についた。
流石通勤ラッシュ。
かなり混んでいる。
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