序章

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暦から言えば季節は春になるのだが、気温の方が1年の流れについていけないのか、はたまたケチな神様が冬の余りを使い切ろうと冷気を送り込んでくるのか知らないが、未だ長袖を手放せずに身体を震わす3月。 我が青木家では、早朝だというのに目まぐるしく駆け回る人達の姿。イベント事となるといつもこれだから困る、と思っていたのはいつまでだったか、今ではそれが普通なのだと認識してしまっている。いやはや慣れというのは恐ろしいものである。 「美咲、新しいネクタイどこにあるかわかる?」 「っもう亮太ったら。クローゼットの中だって昨日言ったでしょ」 「はっはっは、そんな馬鹿な話があったぁぁぁああ!!すげぇな美咲天才、四天王、神。さっすが俺の嫁だぜヒャッホォォウ!!」 「いいから早く支度して亮太。ご飯だって食べないといけないんだから」 「これ…嘘だろ……。美咲見てみろよ…」 「何なのもうっ、私まだ化粧終わってないのに。それでどうしたの?」 「新しいネクタイを締めた俺…予想以上にイケメンじゃね!?」 「時間がないって言ってるのに何やってるの馬鹿亮太!」 「いっっってぇ!何も殴らなくてもいいじゃない!」 朝からコントを繰り広げるのは恥ずかしながら我が両親、50歳を手前にしてこのノリである。
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