序章

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そんな腐れ縁な友人、川島真弓を拾って学校へ行くのも今日が最後となる。 寂しいなんてことは間違ってもない。無論理由などはっきりしている。 家のチャイムを鳴らすとバタバタと走り回る音の次に扉が開かれる。 「ほはほーふはふ!ひはふんひふふははまっへへ!」 寝癖頭にパジャマと歯ブラシのセットという姿で登場した真弓は、早々とそれだけ伝えると再び家の中に戻っていく。 これが毎日恒例のイベント。3年の間1度たりとも準備し終えていた例がない。そして私は玄関で待たされ、数分の後に罪悪感のかけらもないような面で、 「お待たせ昴!さぁさぁ今日は最後の通学だ張り切って行こーぜ!」 などと言うのだ。 それでも毎日健気に通い詰めた私はどこぞの仏かと思う。 しかしそんな辛い朝とも今日でおさらば、そう思えば今では懐かしい思い出となるのだから、自分の寛大さに賞賛の言葉の1つや2つ送りたくなるのも当然と言えよう。 栗色の短めの髪を手でとかし、前髪を愛用のピンでとめてニコニコと楽しそうに飛び跳ねる真弓に呆れつつ、後を追うように私も歩き出した。
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