序章

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学校へ到着すると校門には紅白で彩られたアーチが掲げられ、『卒業おめでとう』と達筆な文字で書いてある。 私達3年は本日、通常の登校時間よりも少し遅れての登校となっている。 在校生が卒業式の準備を終わらせたあたりに私達が登校してくるというわけだ。 このアーチも眠い中準備してくれたのだろう。私が在校生の立場の時は面倒でならなかった卒業式の準備も、いざ自分がされる側になると、どことなく感慨深いものになる。 今日でこの学校ともお別れになるわけか。まぁいい思い出なんてないけど。 「おはよう青木昴、しばらく見ない間に一段と君は真紅の薔薇の如き美しさが増しているね。そんな君に今日も惑わされる阿部諭18歳乙女座」 教室に入った途端、安定した気持ち悪さを存分に見せつけてくれる阿部諭18歳乙女座。 少し長めの黒髪に、きりっとした目。シャープな顔立ちからすれば、どこぞの御曹司と言われてもさほど違和感のない風貌。しかし容姿に栄養が行き過ぎた分、性格が破綻してしまったようだ。 ちなみに我が学園生活に於いて、いい思い出がない原因の大半を担っているのがこいつである。 「阿部っちおはよー。充実した冬休みを過ごしていたかね?」 「受験生に冬休みなんてあるわけないだろう川島真弓。しかし御陰様で第1志望の大学へ進学出来ることが決まったよ」 「おぉー!確か阿部っちが狙ってた大学ってかなりレベルが高かったよね!?さっすが阿部っち天才、四天王、神!」 最近どこかで聞いた台詞だな。そんなに流行っているのだろうか。
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