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──記憶が……徐々に失われているようです
念の為にと、数回通った病院で……医師が告げたという言葉は、ほぼ予想と違わず。
けれど、だからといってそれを受け入れられるのかといえば、そんなことあるはずもなく……
もちろんそんなことは、まだまだ子供の俺には……否、俺達には、出来るはずもなくて。
「記憶障害の一種、なんだって」
遥は、医師が言ったことを思い出す様に、長々と、そして淡々と説明していたが、そんなものは一言も頭に入っていなかった。
そんなことよりも、俺にとって重要なことは……
「治療法は、あるんだよな?」
そのただ一つ。
「…………」
だが、返ってきたのは、
「ごめん、ね」
沈黙。
否定。
……解っていた。
わかって、いたんだ。
俺の質問から逃れる様な、あの目を見れば。
俺は、目の前が、一瞬にして暗くなるのを感じた。
その中で、目の前で椅子に座って動こうとしない遥の白い笑顔だけが……いやにまぶしく見えたのを、覚えている。
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