♯思い出の欠落

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  ──記憶が……徐々に失われているようです  念の為にと、数回通った病院で……医師が告げたという言葉は、ほぼ予想と違わず。  けれど、だからといってそれを受け入れられるのかといえば、そんなことあるはずもなく……  もちろんそんなことは、まだまだ子供の俺には……否、俺達には、出来るはずもなくて。 「記憶障害の一種、なんだって」  遥は、医師が言ったことを思い出す様に、長々と、そして淡々と説明していたが、そんなものは一言も頭に入っていなかった。  そんなことよりも、俺にとって重要なことは…… 「治療法は、あるんだよな?」  そのただ一つ。 「…………」  だが、返ってきたのは、 「ごめん、ね」  沈黙。  否定。 ……解っていた。  わかって、いたんだ。  俺の質問から逃れる様な、あの目を見れば。  俺は、目の前が、一瞬にして暗くなるのを感じた。  その中で、目の前で椅子に座って動こうとしない遥の白い笑顔だけが……いやにまぶしく見えたのを、覚えている。    
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