♯終わりがはじまる

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♯終わりがはじまる

  ガタンッ…… タン、ガタンッ──  揺れる電車。  静かな車両に、微かな振動と音が伝わる。ほぼ無人とも言える空間に、他に動くものはない。  全てのものが、まるで自分のあるべき位置にきちんと収まっているかのように、整然とした空間。  本来ならそこにいるべきではない彼等の姿さえ、今だけは、そこが居場所だとでも言うように馴染んで見える。 ガタンッ……タン、ガタンッ──  長椅子に二人、並んで座る少年と少女。  少し大人びて見える二人は、それでもまだ高校生。 ……そう見えてしまうは、少し沈んだ様にも見える憂いを含んだ表情のせいか。 「……」 「…………」  少年の名は、北城 尚人(キタシロ ナオト)。  少女の名は、浅月 遥(アサヅキ ハルカ)。  二人の他には誰もいない、寂しい田舎電車の中。会話もなく、ただただ外に広がり、流れていく風景だけを眺めていた。 ──まるで、あの日……あの時の様に。    
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