♯終わりがはじまる

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  ガタッ、ガタンッ タタンッ…… 「…………」 ……ああ、もちろん解っている。解らないわけがない。 ──二人だけで、此処じゃないどこかへ。  あの日なら、達成出来たかもしれないこと。  あの頃の二人なら、叶えられたかもしれない願い。  だけど今、それを、お前が望んでいないことくらい。 「あっ」  隣りから突然聞こえた小さな感嘆の声に、視線を上げたその瞬間、差し込んだ光に思わず目を細めた。 「…………」  少しずつ、その眩しさに慣れてくると、同時に見えてくるのは輝く白と蒼。  砂浜と、海だ。 ……そう。  これも、あの日に見たのと同じ光景。  一年の月日が経った今でも、何も変わらない場所、変わらない景色。  それらは何一つとして変わらないまま、また、俺達を迎えてくれるのに。  俺達だけが、あの頃とは違う。  確実に、何かが変わってしまっていた。  そして、思い出す。 「もうすぐ……終点、だね」 「そうだな」  この、長い二人旅の終わりが来たのだ、と。  
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