♯思い出の欠落

1/3
前へ
/15ページ
次へ

♯思い出の欠落

  ──あのさ、ここって……もう習ったっけ?  もう、3ヶ月は前になるだろうか。遥がそう言って、困惑げに訊いてきたのは。  彼女が指差す英語の教科書には、蛍光マーカーでしっかりとラインが引かれていて……なのに彼女は、そこを習ったかどうか分からないと言う。 「あぁ、3週間くらい前だったかな……お前、分からないからって、散々俺に聞いてきたじゃねぇか」 「……そんなこと、あったっけ?」  そう言って首を傾げた遥の表情は、とぼけているものでも、訝しんでいるものでもなく。  ただ素直に、忘れている、分からないという様なもので……  ただの物忘れだ、そう思った。  まだ、その時は……    
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加