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♯思い出の欠落
──あのさ、ここって……もう習ったっけ?
もう、3ヶ月は前になるだろうか。遥がそう言って、困惑げに訊いてきたのは。
彼女が指差す英語の教科書には、蛍光マーカーでしっかりとラインが引かれていて……なのに彼女は、そこを習ったかどうか分からないと言う。
「あぁ、3週間くらい前だったかな……お前、分からないからって、散々俺に聞いてきたじゃねぇか」
「……そんなこと、あったっけ?」
そう言って首を傾げた遥の表情は、とぼけているものでも、訝しんでいるものでもなく。
ただ素直に、忘れている、分からないという様なもので……
ただの物忘れだ、そう思った。
まだ、その時は……
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