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僕は美波のベッドに腰掛け本を読んでいた。最近話題になっている小説だった。
ふと目を斜め左に向けると美波のシャーペンを持つ手が止まっていた。
「美波、終わった?」
美波は一瞬体を強張らせ、こちらに顔を向けた。表情はいつもとたいして変わらなかった。
「圭吾、これ、分かんない」
僕は腰を浮かし美波のそばに寄ってプリントを眺めた。それは美波の通う高校から宿題として出されたものだった。
「この問題はこれの応用だよ、ベクトルで使う基本公式はもう覚えただろう?」
「その先が分からない、解き方思い付かない」
「ヒントをあげようか、こことここをsとtとしてまた別の式を作るんだ」
「………ちょっと待って」
美波はひらめいたようだった。
彼女は道筋が頭に浮かび、答えが見えると決まって同じことを口にした。
「連立でしょう?」
「そうだね」
「答え出た」
美波はにんまりとした顔をこちらに向けた。僕は微笑みを返した。
「正解」
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