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「圭、圭ってば」 高い声が僕を呼んだ。 大学のそばにあるカフェでうたた寝をしているときだった。手元には最近話題になっている小説があった。 「ああ、恵梨」 僕は窓際にあるカウンターのような席に座っていた。 早川恵梨は僕の隣に腰をかけ、胸下まであるカールのかかった茶色の髪を耳にかけた。 イミテーションダイヤのピアスがキラリと光った。僕が彼女に贈ったものだった。 「圭が本読むなんて意外、しかも恋愛小説?」 恵梨は本を手に取り、パラパラとページをめくった。 「卓也のおすすめなんだよ、読めって渡された、恵梨は読んだ?」 卓也とは同じ学科の友人だ。 「あたしは漫画と雑誌しか読まないもん」 恵梨は本を閉じ、僕に差し出した。 「そうか」 僕は彼女から本を受け取り、鞄に入れた。
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