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あたし達は、毎日飽きずにキスを繰り返した。
何度も何度も
「好き」
を繰り返した。
思えば、あたし達二人はとても不器用で、まだ幼かったから。それ以外に、お互いが抱えた気持ちを伝える術を知らなかったのだ。
(でも、すごく幸せだったな)
今はそう思う。
ただ、抱き合って、体に触れて、肌を合わせてという行為は、少しだけ、あたし達には早かった。
その頃にはあたしも人並みには、大人の事情を知っていて、体を重ねるということが一体どんなことなのか、興味を持っていた。
だから、あたしが先に
「いいよ」
と言ったのだ。
嵐丸なら、きっと我慢してくれた。それなのに、あたしが
「いいよ」
なんて言ったから。
気持ちが焦っていた。幼く、無知だったとしか言いようがない。
(初めては、嵐丸としたい)
あたしのそんな気持ちは、あっという間に膨れあがって、それで
「いいよ」
の言葉が出てしまった。
二人は服を脱ぎ捨てて、ベッドの上で向かい合った。
少しだけ怖くて、でも期待も大きくて、嵐丸と早く繋がって見たかった。
(初めてって痛いのかな)
そんな不安に思う中、あたしの入口に彼の欲望が少しだけ、触れた。
嵐丸の欲望はこれ以上ないくらいに熱くて、あたしは恥ずかしさからぎゅっと目をつぶった。
「きゃ…っ」
次の瞬間、あたしは下腹部に何か熱いドロッとしたものがこぼれたのを感じて、恐る恐る目を開けた。彼が達してしまったのだと気付くまで、かなりの時間が掛かった。
「ごめん…っ」
嵐丸が泣きそうな顔で謝る。
あたしはその時、彼が何故謝ったのか理解出来ずにいた。
「嵐丸…?」
「ごめん…チイコ」
彼は何度も謝って、あたしの下腹部をティッシュで拭った。
「あたし、平気だよ…?嵐丸、」
あたしが彼に呼びかけても、彼は一度もあたしを見ようとはしなかった。
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