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(あたしのせいだ)
あたしは罪人にでもなった気分で、うつむいた。
あたしが彼を誘ったのだ。でも、失敗してしまった。
初めてを失敗したのだから、お互いに傷付く。
あたしは彼を傷付けたのだ。
「嵐丸…っ あの、あたし…」
あたしが話し合おうとしているのは分かっていたはずなのに、嵐丸は
「もう、帰る」
とそそくさと服を着てしまった。
「待って、嵐丸…っ あの、あたし…ごめんね」
あたしは他の言葉が思いつかずに、ただ謝ることしか出来なかった。
が、嵐丸は
「…なんでチイコが謝んの…?」
と悔しげに言って、そのまま顔を真っ赤にして、出て行ってしまった。
それが、あたし達の幼い恋の終わり。呆気ない、終わり。
それから、あたし達は気まずくなって、話が出来なくなってしまった。
あたしは何度も何度も、彼に謝ろうと試みては
「…なんでチイコが謝んの…?」
と言われた時のことを思い出し、結局いえず仕舞いのまま、中学を卒業した。
それから、連絡が取れなくなっても、あたしの心の中にはいつも彼がいた。
ずっと後悔している。
(背伸びなんか、しなければ良かった)
あたし達は等身大でいれば、それで良かったのだ。
(あたし、嵐丸のことが大好きだった)
あれから、別の人と付き合いもしたし、別れも経験した。
でも、嵐丸ほど、あたしをドキドキさせてくれた人はいない。
嵐丸ほど、体中で
「大好き」
と思える人と、あたしは出会っていない。
秋の高い空、ちょうど冬がやって来る時期になると、あたしはいつも嵐丸を思い出す。
忘れられない。
すごく格好良くて
すごく可愛くて
心から、大好きな人。
体ごと、大好きな人。
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