636人が本棚に入れています
本棚に追加
あれは中学校二年生の二学期のこと。
文化祭の出し物で、うちのクラスはお化け屋敷を作ることになっていて、五人組の班を作らなければならなかった。
「チイコ、一緒にやろう」
声を掛けて来たのは、親友のショウコとチャミだった。
「うん、やろうやろう」
いつもの三人組でまとまり、あとはショウコが
「直樹と嵐丸、誘ってみない?」
と言うので、あたしは特に反対しなかった。
その時は、まだ直樹とも嵐丸ともそんなに仲が良くなくて、ただ少し離れた所から見て
(いつも二人一緒にいるなぁ)
と思うくらいの関係だった。
五人で集まって、あたし達の班は大きなお墓を段ボールで作ることになっていた。
「お墓作りかぁ。放課後の作業とか怖そうだねーっ」
あたしとショウコやチャミはそう言って、きゃぁきゃぁ騒いで
「こら、そこ。学級会の最中だぞ、静かにしなさい」
と当時の担任に怒られたりしたことを、今は少し懐かしく思う。
最初に仲良くなったのは、直樹の方だった。
「チイコ」
とあたしを呼び捨てにしたのも、直樹の方が先だ。
それまでは苗字にさん付け、くん付けだったのを、お互いに
「もう呼び捨てでもいいよね」
と言い合って、少し距離が近付いた。
そのうち嵐丸も、あたしを
「チイコ」
と呼ぶようになったけれど、あたしはいつまでも
「嵐丸くん」
と呼んでいた。
別に何か特別な思いがあったわけじゃなくて、単純に機会を逃してしまっただけだ。
仲は良かった。
放課後に近くのスーパーに行って段ボールをもらって来たり、一緒に設計図を考えたりもしたし、休日でも五人で集まってテスト勉強をしたりした。
チャミの家に集まった時のことだ。
「チイコ、彼氏作んねえの?」
直樹にそう聞かれて、あたしより先に友達のチャミが答えた。
「チイコは理想が高いんだよねー?」
「え、高くないよう」
あたしは首を横に振ったけれど
「じゃぁ、どんなのが理想なの?」
という話になってしまって、かなり困ったことを覚えている。
最初のコメントを投稿しよう!