記憶 ver チイコ

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 あれは中学校二年生の二学期のこと。  文化祭の出し物で、うちのクラスはお化け屋敷を作ることになっていて、五人組の班を作らなければならなかった。 「チイコ、一緒にやろう」  声を掛けて来たのは、親友のショウコとチャミだった。 「うん、やろうやろう」  いつもの三人組でまとまり、あとはショウコが 「直樹と嵐丸、誘ってみない?」 と言うので、あたしは特に反対しなかった。  その時は、まだ直樹とも嵐丸ともそんなに仲が良くなくて、ただ少し離れた所から見て (いつも二人一緒にいるなぁ) と思うくらいの関係だった。  五人で集まって、あたし達の班は大きなお墓を段ボールで作ることになっていた。 「お墓作りかぁ。放課後の作業とか怖そうだねーっ」  あたしとショウコやチャミはそう言って、きゃぁきゃぁ騒いで 「こら、そこ。学級会の最中だぞ、静かにしなさい」 と当時の担任に怒られたりしたことを、今は少し懐かしく思う。  最初に仲良くなったのは、直樹の方だった。 「チイコ」 とあたしを呼び捨てにしたのも、直樹の方が先だ。  それまでは苗字にさん付け、くん付けだったのを、お互いに 「もう呼び捨てでもいいよね」 と言い合って、少し距離が近付いた。  そのうち嵐丸も、あたしを 「チイコ」 と呼ぶようになったけれど、あたしはいつまでも 「嵐丸くん」 と呼んでいた。  別に何か特別な思いがあったわけじゃなくて、単純に機会を逃してしまっただけだ。  仲は良かった。  放課後に近くのスーパーに行って段ボールをもらって来たり、一緒に設計図を考えたりもしたし、休日でも五人で集まってテスト勉強をしたりした。  チャミの家に集まった時のことだ。 「チイコ、彼氏作んねえの?」  直樹にそう聞かれて、あたしより先に友達のチャミが答えた。 「チイコは理想が高いんだよねー?」 「え、高くないよう」  あたしは首を横に振ったけれど 「じゃぁ、どんなのが理想なの?」 という話になってしまって、かなり困ったことを覚えている。
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