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「え、なんで?二人が喧嘩することなんか、あるの?」
あたしは目を丸くしたが、直樹は
「間に女が挟まると、男は喧嘩するもんなの。いいから、ちゃんと言えよ?」
と一方的に言って、さっさとどこかに行ってしまった。
(なんなのよ…)
なんであたしが嵐丸に告白しないと、あの二人が喧嘩をすることになるのだろうと不思議に思いながらも
(告白、かぁ…)
あたしは小さく溜め息を吐いた。
直樹の言った通り、本当に嵐丸以外は、あたしの気持ちに気付いていたらしい。
完成したお化け屋敷の前で、クラスメイトが
「誰か試しに入って見ろよ!」
と言い出し
「嵐丸、チイコ誘えって!」
と冷やかされた。
「あたし、怖いの苦手だからいい、いい!」
あたしは慌ててそれを断ろうとしたが、直樹に肩をつつかれた嵐丸が
「行こうぜ、チイコ」
と右手をのばして来た時は、心臓が止まるかと思った。
(手、つなげる)
それだけで一気に鼓動が跳ね上がる。恥ずかしいけど、嬉しい。
(どうしよう、すごくドキドキしてる)
動けずにいると
「ほら、入るぞ」
グッと嵐丸に手を握られた。
ヒューヒューと冷やかしの声を聞きながら、あたしは嵐丸と一緒にお化け屋敷に足を踏み出した。
真っ暗闇。つないだ手に、全神経が集中する。
「気をつけろよ、足元」
嵐丸の声が、少し緊張している。
クラスメイトがあたし達を脅かそうとしているのだろう。ドン!と大きな音がして、あたしより先を歩いていた嵐丸が、ビクッとしたのが分かった。
あたしの方はと言えば、嵐丸と手をつないでいるということにドキドキし過ぎて、お化け屋敷を怖いと思わなかった。
「…嵐丸、怖い?」
そうこっそり尋ねてみると
「怖くねえよ…っ チイコこそ、怖いの苦手なんだろ」
と少しすねたような声が返ってくる。
強がりな所すら可愛くて、あたしは思わず笑いそうになるのを堪えなくてはならなかった。
あたしは勇気を振り絞って
「うん。怖いの苦手。だから、手、離さないで」
と言って見た。
「離さねえよ」
ぶっきらぼうに言った嵐丸が、ぎゅっとあたしの手を握り直す。
「ちゃんとそばにいろよ。じゃないと、コケたりとかしても守れねえから」
そんなセリフを聞いて、あたしは耳まで真っ赤になった。暗くて本当に良かったと思う。
(嵐丸、格好いい)
あたしは嬉しくて、嬉しくて、彼の手をぎゅっと握り返した。
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