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 そして、臆病者相手に俺が遅れを取ることは無い。  ガガガッ!!  猛獣が捕食するようにフラガラッハの牙は敵HAの両脚、大腿部を抉り、鮮血が火花として其処から溢れかえる。巨砲の咆哮はガタノトーアの背部を霞め、本来の役割を失った鋼鉄の塊は地面を抉ってその力を失う。  まだだ。  両脚のペダルを操作し、ガタノトーアの右脚で、既にスレイヴ・バイ・ワイヤ(SBW)を切断された敵HAの両脚を蹴り飛ばす。丁度、ダルマ落としでもするかのように。  そして、残されたダルマ、下半身を失った敵HAはこの星の摂理、重力に引かれて地に堕ちる。搭乗者に多大なる衝撃を与えながら。  ガン!  まるで、ガキが持っていた玩具から手を離した時のような滑稽さ。だが、その玩具の中で大の大人が悲鳴を上げ、どうか助けて、と数秒前まで全く信じていなかった神に祈りを捧げる。  力を持っていた者が絶叫しながら地に堕ちる、俺はそれが大好きだった。加えてそれが虚勢を張った臆病者であれば更に良い、極上品だ。  ただ己の快楽を求めているだけなのに、主催者共は俺の卑劣さをパフォーマンスと捉え、この戦争ショーの目玉商品に仕立て上げる。故に今の行動もパフォーマンスの一つに数えられ、追加ボーナスが加算される。こんな美味しい商売は他に無い。
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