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 人の形をしているのだからHAなのだろうが、少なくとも俺はこんな不格好、中に巨人でも入ってそうなずんぐりとしたボディのHAを見たことは無い。  だが、そんな不格好なHAは俺の頭上を軽々と飛び越え、俺が後で為留める筈だった二機のHA達に牙を剥けた。俺は連中の方へと目を向けたが、その時には既に二機は戦闘不能、コックピットブロックが人体ごとバラバラに解体されていた。  突如現れた桃色のHAは、これだけでは飽き足りんと言わんばかりに次の目標、俺が絶叫させ終えた緑のHAへと疾走し、緑のコックピットを右の刃で串刺しにする。  間違いない。  世界を変えての突然の出現、軍事的優位性を完全に無視したフォルム、生存確率を確実に0へと変えるこの所業、それらの特徴は最近、バトルゲームを完膚なきまでに破壊し尽くした謎のHA、『鵺』の特徴に全て合致する。  黄色、赤、青、緑、と今まで何故かいつも一人だけ生き残った奴らが報告した色とは違う、桃色の鵺だが、新たな色が登場する辺り、このHAが鵺である何よりの証拠だと俺は感じ、それと同時に、  面白い。  今やバトルゲームを壊滅に至らしめる鵺の撃破は主催者共にとって至上命題。コイツの首を持っていけば、俺は巨万の富を手に入れる事が出来るに違いないし、何より鵺の調子に乗り切った鼻っぱしをへし折れば、どんなに爽快な気分になれるだろうか。失禁ものに違いない。  俺は両手のレバーを握りしめ、小枝で蟻を虐める幼児のようにもう動かないHAの胸部を抉る鵺に向かって突進し……
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