第二章 『惑思なる千里眼』

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「こ、ここは……」 見れば、ナイトは公園の広場に立っていた。 時計を見れば、時刻は午後四時、太陽が西に傾いた時間あった。 「……ん?」 手に違和感があった。 見れば、“手に持ったクレープの中に入ったアイスが溶けて、ナイトの手にこぼれていた。” 「クレープ……まさか!?」 「ようやくわかりましたか?」 ハッと顔を上げると、目の前には公園のクレープ売りの男が立っていた。 いや、男の姿が歪み、それはそのままミハイルの姿となった。 「あなたはね、私と出会う前から……正確に言えば、あなたはこの公園に来て、そのクレープを買ったときから私の幻影の世界を彷徨っていたのですよ」 「そんな……」 ナイトはなお信じられず、携帯電話の時計を見た。 表示される時刻は、七月“一日”の午後四時一分。 「まさか、そんなバカなことが」 ならば、まさか、ナイトは最初から騙されていたというのか。 全てはミハイルの幻影で、実際のところ、ナイトはこの公園から一歩も動かず、手の中のアイスが夏の日差しで溶け出してしまう程度の短い時間しか、まだ経っていないというのか?
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