第三章 虚構と現実と     虚構の中の現実

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「ナイトォォォォ!!」 ヨルは必死に叫びながら走ったが、間に合わなかった。 嫌な予感がして、慌てて戻ってくれば案の定だ。 いつのまにか公園に描かれていた魔法陣によって見慣れぬ魔乖咒が発動し、マズイと思ったときにはもう手遅れだった。 ナイトはヨルが見守る中、巨大な魔法陣に飲み込まれ、崩れるように倒れたのだった。 「ナイト! しっかりしなさい!」 倒れたナイトに駆け寄り、抱き起こしながらヨルは片手で魔法陣を描いて魔乖咒を発動させた。 『闇』系統第二咒法〈闇天使の癒し手〉だ。 致命傷であっても瞬時にふさぐ、最高の回復魔乖咒である。 だが、その魔乖咒でもナイトは起き上がることはなかった。 「どうしてよ! 傷は、ないなずなのに……」 〈闇天使の癒し手〉は肉体の傷は無論、精神的な傷すらも回復させる強力な魔乖咒である。 なのにナイトは目覚めない。 「クックックックック、無駄ですよ、『闇』。たとえあなたの魔乖咒がどれほど強力であっても、我が夢の呪縛を解くことはでいません」 「あなたは……」 異様な風体の魔乖術師は深々と、慇懃な礼をした。
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