第三章 虚構と現実と     虚構の中の現実

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「初めまして、『闇』の魔乖術師ヨルミルミ・シュトレンベルグさん。私はミハイル・ド・ロベルト・ダ・フィッティヴァルホックというものです。 お察しの通り、私が『偽』の代表ですよ」 「どうやってここに……」 クックック、とミハイルはやはり人を小ばかにした含み笑いをもらした。 「我が『偽』の魔乖咒の偽装能力をもってすれば、あなたに気づかれないようにこの街へ侵入するくらいわけないことですよ」 「そう、細かいことはどうでもいいわ。今大切なのは……ナイトをこんな目に合わせたのは、あなたなのね?」 ヨルは柳眉を吊り上げてミハイルを睨んだ。 情けなかった。 不甲斐なかった。 ナイトをこんな目に合わせてしまった自分自身が、くだらないことで心を乱してしまった己の未熟さが、なによりも悔しかった。 ミハイルはそんなヨルを前にしても、実に楽しそうに笑ったままである。 「オヤオヤ、怖いですねぇ。 で、だとしたら、どうだというのですか?」 「どうもしないわ。ただ―― あなたを殺す理由が一つ増えるだけの話よ」 ヨルがそう言った瞬間、ヨルの目の前の空間に火がともり、勢いよくミハイルめがけて飛んでいった。 火の玉はミハイルの体を素通りし、背後の地面にぶつかって小爆発を起こした。
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