第三章 虚構と現実と     虚構の中の現実

5/68
前へ
/326ページ
次へ
「そこよ!」 ヨルが手を振る。 黒い刃がその指先から伸び、何もない空間を薙いだ。 いや、その空間が歪み、そこから胸を押さえたミハイルが姿を現した。 ヨルの魔乖咒によって上着が切られ、めくれた布の下の浅黒い肌はわずかに傷ついていた。 ミハイルは自らが傷つきながらも、やはり楽しそうに笑みを浮かべていた。 「驚きですねぇ~。私の居場所がどうしてわかったのですか?」 「わたしは魔力の気配に敏感でね、あなたのその忌々しい魔力は一度見れば、目をつぶっててもわかるわ。おまけに、この街中にはわたしの仕掛けた探索用魔乖咒もある。これだけ接近すれば、あなたの隠れ蓑がどれだけ高性能でも、だいたいの居場所はわかるわ」 「クックック、さすがですねぇ。やはり、あなたは早めに潰しておくほうがよさそうです」 ミハイルは、だが余裕たっぷりな態度を崩さなかった。
/326ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加