六月三日、朝の歌声

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須内輪太は、生まれた時から目が見えなかった。 歩き始めた頃は、しょっちゅうあちこちに頭をぶつけ、見ていて気の休まる暇が無かったと、母からは聞いている。 生まれた時から目が見えないわけだから、この世界が一体どういうものなのか、須内輪太は見た事が無い。 彼にとって世界とは、嗅いで、聴いて、そして触れるもの。 今、輪太を照らす太陽も、肌をじりじりと焼く、不思議なもの。 丸くて光る天体だとは聞いているが、いったいどんな姿をしているのかと、毎朝考えてみる輪太である。
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