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キッチンの扉を開けると、カチャカチャと食器が鳴る音と同時に、香ばしい匂いがした。
「お母さん、お早う」
「お早う!」
母が、元気な挨拶を返した。
パサリと、新聞を畳む音が聞こえる。
「お父さんも、お早う」
「うん」
鼻を突く煙草の煙のような、掠れた声は父のもの。
「お兄ちゃんは?」
輪太が椅子を引きながら言うと、
「またサークルの友達と徹夜だって」
不機嫌そうな母の声が返ってきた。
「はは……」
コトリと、テーブルの上に皿が置かれる。
パカッというのは、炊飯器を開ける音だ。
「よくやるよね、お兄ちゃんも」
「ホントよ、全く」
母が、ふわりと甘い白米の匂いと共に、言った。
「大学って本当に無駄よね、学費は高いし、授業は少ないし。ねぇ、パパ?」
「ううむ」
父は上の空で、新聞を読んでいるようだった。
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