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俺に柚香という彼女がいたこと。
柚香と一週間連絡を取れなかったこと。
その間に柚香が他に好きな人を見つけてしまったこと。
久しぶりの連絡で別れを告げられたこと。
その帰りに舞子さんの携帯を見つけたこと。
全部話した。
話してる間、何回か涙が零れそうな時があったが何とかこらえた。
全て話し終えると舞子さんは眼鏡をはずして俺を見た。
「それで泣いて目が真っ赤になったと。
若いなぁ、私にもそんな時期があったなぁ」
「男が泣くなんて恥ずかしいですよね……」
「そんなことないよ、ツバキ」
舞子さんが俺の頭に手を置いた。
「男だって好きな女に振られた時は、泣いていいんだよ。
むしろ泣け。今日全部泣いて、明日以降泣くな。
今日で泣いて哀しむのは終わり。
だから今日だけは、泣いていいんだよ」
舞子さんのその言葉で俺の我慢してた涙があふれてきた。
「凄く、凄く、好きだったんです」
「うん」
「柚香は……本当に自慢の彼女だったんです……。うっ……」
俺は店の雰囲気など関係なしに泣いた。
もう止められなかった。
一粒一粒の涙に、柚香との思い出が写ってる気がした。
「すいません……。情けないですよね……」
「うん、情けない。
だけど明日以降に引きずる方が凄く情けない。
今日は私が付き合ってあげるよ」
舞子さんは俺が泣いてる間ずっと俺の頭を撫でてくれていた。
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