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「本当にご馳走になっちゃってすみません」
「いいって、働いてないツバキには無理でしょ」
確かにメニューの値段を見た限りは、とてもじゃないけど払えるような金額ではない。
でも男が女性におごられるって何か……なぁ……。
「それに話まで聞いてもらっちゃって……」
「気にしないでよ。こうして知り合えたのも何かの縁じゃない」
確かに普通ならば俺と舞子さんは知り合うことなどなかった。
舞子さんが偶然、携帯を落としたから……。
「さっきはああ言ったけどさ。
多分、ツバキは元カノ……柚香ちゃんのこと簡単に忘れられないと思う。
でも、それでいいよ。その内、いい思い出になってくれる。
時間が解決してくれる。……私だってそうだった」
舞子さんはそう言うと苦い笑みを漏らす。
「恋っていつだって苦しいよね。
苦しむか、苦しめるか。ホント、難しい物。
それでも、人って恋しちゃうんだよね」
舞子さんはカーナビに小崎駅をセットした。
「送ってもらえるんですか?」
「あら、泊まる予定だった?」
舞子さんの言葉に俺はドキッとした。
「そ、そんなつもりじゃ……」
「あはは、必死に否定しちゃって可愛いじゃん」
舞子さんは声を出して笑う。
完全に俺、遊ばれてるな……。
「どうする? 言ってくれれば家の近くまで出すわよ?」
俺は最初、その申し出を断った。
舞子さんに悪い気がしたからだ。
でも舞子さんが別に構わないと言ったので、
厚意に甘え、俺の家の近くまで送ってもらうことにした。
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