1.別れ

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「ごめんね、私、これ以上ツバキとは付き合えない」 柚香(ゆずか)からの突然の宣告に俺は目の前が真っ暗になった。 「あのね。昨日、私の元彼と会ってきてね……。 何というか、その、好きになっちゃった」 やめてくれ。 やめてくれ……。 もうそれ以上聞きたくない。 「10ヶ月間ありがとう。本当に楽しかった。 じゃあね、ばいばい」 柚香は振り向いて、どんどん離れていく。 「待てよ!!」 柚香はゆっくりとこちらを振り向いた。 「なに?」 「本当に終わりなのか……?」 柚香は首をゆっくり縦に動かした。 「自分なりに考えて出した答えだから。もう覆ることはないよ」 何が来ても、言い返すつもりだった。だけど、口からは何も出てこなかった。柚香の目を見て分かってしまった。 柚香の目は俺じゃない、他の誰かを見てる……。 「もう、いいかな? 幸助が待ってるから」 俺はたまらずその場から走り去った。 一番聞きたくなかった、幸助、という名前。 今、柚香が好きな男の名前。 それだけは、聞きたくなかった。 『何それ。ツバキったらもう!!』 あんなに好きだった笑顔も。 『好きだよ、ツバキ』 あんなに甘かった言葉も、体も。 もう今は俺の物じゃない。受け入れることが出来なかった。 逃げることしか出来なかった。
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