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家に帰ってから俺はすぐに風呂の電源を付けた。
「あら、柚香ちゃんと遊んでくるんじゃなかったの?」
母さんが訝(いぶか)しげな目で俺を見る。
そっか、出る時は「柚香と遊んでくる」って言ったんだっけ。
「別れたよ……」
「そう……。ゆっくりお風呂につかりなさいね」
深く聞いてこない母さんに今は感謝したかった。
俺は部屋に入るとそのままベットに倒れこんだ。
終わっちまったんだなぁ、全部。
寂しさと共に虚無感もこみあげてくる。
フォトフレームの写真の俺達は無邪気に笑っている。
こうしてる間にも柚香は他の男と一緒にいるんだろう。
くそ……。
考えたくないことまで考えてしまう。
俺は立ち上がってフォトフレームを下に倒した。
その時、左側のポケットに違和感に気付いた。
俺がまさぐるとそこにはピンクの携帯電話があった。
あぁ、そういやさっき拾ったんだっけな。
俺、何で警察に届けなかったんだろう。
そんなことにさえ気付かない程、俺は酷い精神状態だったんだろうか。
俺はその携帯電話の電源ボタンを押した。
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