4.揺れる気持ち

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「え、今日ツバキも部活来ないんだ? 友希も来ないって言ってたよ」 麻里はつまらなそうな顔をした。 俺も顔を出そうと思ったのだが、朝、届いたメールがその気を変えた。 『久しぶりの日本はいいね。 という訳で今日ご飯食べに行くから』 差出人は舞子さんだった。 しばらく連絡がないと思っていたけど、日本にいなかったのか。 出張か、休暇か……。 まぁ、どちらでも構わない。 俺は了解ですとメールを送った。 でもそろそろ次の作品について考えをまとめないと期限が危ない。 締め切り目前になって焦るのは嫌だしな……。 「友希も締め切りを意識してるんじゃないか?」 俺が聞くと麻里は首を横に振った。 「坂井達と合コンに行くんだって。 新しい服着て意気込んでたわよ」 麻里はため息をついた。 「坂井達も行かないってことは2年男子は全滅か?」 「じゃあ今日は美雪先輩やさやか誘って女子会しようかな」 「沢田先輩そういうの好きそうだしな」 お喋りが大好きな沢田先輩は麻里と特に仲がいい。 勿論、他の人とも仲は良いが麻里とは特別馬が合っている。 「で、アンタは何で来ないの?」 「舞子さんと会うんだよ」 「舞子? あぁ、あのOLの人か。 何、新しい彼女なの?」 俺はすぐさま否定した。 舞子さんが彼女だなんて……。 おこがましいのにも程があるだろう。 「そういえば美代先輩、舞子さんのことなんか知ってるみたいだったわよ?」 「大宮先輩が?」 「うん、そうだ、思い出した。 美代先輩からの伝言。 『今度舞子さんにあったら私の名前言ってみて』だって」 どういうことだろうか。 舞子さんと大宮先輩にどんな繋がりが? 「私もどういう意味か分からなかったけどさ。 サボるんだからそれくらいのことはしてよね」 「サボるって……別にそう言う訳じゃ……」 「へぇ、綺麗な女性と食事に行くのがサボりじゃないんだ?」 完全に目が三角になっている。 こうなった麻里は口が止まることはない。 俺は講義終了と同時に教室を飛び出した。 大体、麻里だって女子会するとか言ってたじゃないか! 勿論そんなことは面と向かって言えたもんじゃない。
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