4.揺れる気持ち

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今日は大学の前まで車を回してもらうことになっている。 大学名を伝えると、そこならすぐ分かると言っていた。 まぁこの時代、ナビがあるから迷うことなどないだろう。 「あれ、ツバキ先輩何してるんですか?」 声をかけてきたのは梓ちゃんと夏奈だ。 2人とも手にはコンビニの袋を下げている。 「いや、ちょっと待ち合わせしてるんだよ」 「おっと、彼女ですか?」 梓ちゃんがニヤニヤして聞いてくる。 この子にはどこか麻里と同じにおいを感じる。 「この前のOLの人と会うだけだよ」 「デートじゃないですか!」 梓ちゃんはキャーキャー騒ぎ立てていた。 夏奈はというと頬を膨らませてていた。 「憤慨です。私達は締め切りが近いから作品書こうと必死なのに、 ツバキ先輩はのうのうと遊んでる。許されざることです」 「まぁ、今日だけだから、な」 「友希先輩も合コンとか……。 先輩達、ふ抜けてませんか!? 後で締め切りに泣いても知りませんよ」 それだけ言うと夏奈はぷいっとそっぽを向いた。 そしてそのままスタスタと歩き始めた。 「あ、待ってよ夏奈。 じゃあ、また明日です、ツバキ先輩!」 梓ちゃんは慌てて夏奈の後を追いかけた。 でも2人ともどんな作品を書くんだろう。 出来あがるのが楽しみだな。 そんなことを考えている時だった。 見覚えのある白い車が近付いてきた。 「ツバキ、久しぶり。さ、乗って」 俺はいつものように助手席に乗った。 「たまにはツバキが運転してみる?」 「え?」 俺は、免許を取ったものの全然運転はしてなかった。 なので今運転なんて出来るはずない。 「何てね。じゃあ行きましょ。 今日はお寿司食べましょう、和食が恋しいわ」 そういえば舞子さん、アメリカにいたんだっけな。 面白い話が聞けそうだな。
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