16人が本棚に入れています
本棚に追加
「やっぱりトロだね!
日本に戻ってきた感じ!」
舞子さんは上機嫌でお寿司を口に運ぶ。
俺もお寿司は久しぶりなので凄く美味く感じた。
「それで何か変わったことはないの?」
舞子さんがお茶を飲んで一息つく。
そこで俺は麻里から聞いた大宮先輩のことを話してみることにした。
「舞子さん、大宮 美代って知ってますか?」
俺がそう聞くと、舞子さんは唇に指を当てて考え込んだ。
しばらくして首を横に振った。
「うーん……記憶にないなぁ」
「そうですか……」
一体何だったんだろうか。
大宮先輩の記憶違いか?
「でも少なからずその人は私のこと知ってるってことだよね?
何か思い出せないの気持ち悪いなぁ……」
「ちなみに大宮先輩は今、俺の文芸部の部長ですよ」
「……文芸部……あ、もしかして!」
舞子さんは何か閃いたようだ。
そして財布から一枚の写真を取り出した。
「この人じゃない?」
舞子さんの細くて綺麗な指が、一人の人物を指さした。
今の大人っぽい雰囲気は感じられず、
どこか元気でまだ茶目っ気が残ってはいたものの、
その人物は大宮先輩だった。
でもこの写真は随分前の物と見受けられる。
場所こそ俺らの文芸部の部室なものの、
そこに写ってる人物は知らない人が多い。
気付けば佐伯先輩も沢田先輩もそこにはいた。
「あの……舞子さん、何で舞子さんがこんな写真を?」
「……そうね、もう話してもいいのかもね」
舞子さんは眼鏡を外した。
「私、あなたの部活のOBなのよ」
「……え!?」
「驚くでしょ?
私もびっくりしたわ。でも大学が同じだったから。
こんな偶然あるのね」
もはや奇跡の域にあるんじゃないだろうか。
俺がたまたま知り合った人物が文芸部とゆかりある人物だったなんて。
だが待てよ……。
最初のコメントを投稿しよう!