4.揺れる気持ち

5/17
前へ
/86ページ
次へ
「年齢的におかしくないですか?」 舞子さんは現在24歳。 大宮先輩は20歳だ。 どうやっても会うことなんてないんじゃないのか? 「私、1度だけOGとして遊びに来たのよ。 その時にこの子たちに色々話したのよ。 そしたら意気投合しちゃって。 だからその子も覚えててくれたんじゃないのかな?」 成程、それなら合点がいく。 「だから俺にここまで良くしてくれるんですか? 同じ文芸部の仲間だからって」 「最初はそうかなぁと自分でも思ったけどね。 でもそれだけじゃないわ。 それにツバキのことは大切な友達って思ってるわよ」 そう言ってくれるのは凄く嬉しい。 俺もこうやって舞子さんと過ごす時間が好きだから。 それでも1つ引っかかることがあった。 「本当にそれだけですか?」 「それだけって?」 「それだけで俺みたいな子供に良くしてくれますか?」 俺がそう言うと舞子さんは俺を真剣な眼差しで見た。 俺は一瞬怯んだが、負けずに見つめ返した。 しばらくそうしていたが、直に舞子さんはふっと笑った。 「ツバキ、アンタに私はどう写ってる?」 「どうって……?」 「何でも話を聞いてくれる優しいお姉さんか。 はたまたアンタを騙してる悪女か」 「騙してるって……」 「今日はここまで。ご馳走様」 舞子さんは立ち上がって2人分の会計を店員に渡した。 「まだ話は終わってません」 「私の中では終わったの」 ダメだ。こういう駆け引きになると舞子さんには勝てない。 なら、これだけは伝えておこう。 「俺も舞子さんのこと、大切な友達と思ってます」 俺がそう言うと舞子さんは俺の頭の上に手を置いた。 「ありがとう。 だからこそ、あなたにかけてみたいの」 「かける……?」 「お喋りが過ぎたわね。行きましょ」 その後は、俺も深く追求しなかった。 何か舞子さんが考えていても、舞子さんは俺の友達だ。 それさえ分かっていれば問題ない。 「ん……誰かアンタの家の前に立ってるわよ」 「え?」 舞子さんはスピードを落として、俺の家の少し前に停車した。 その人物の姿がライトに照らされる。 俺はハッと息をのんだ。 「柚香……」 そこには柚香が立っていた。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加