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「寂しい……」
「え?」
「ツバキがいないと……私寂しいよ」
柚香はもう俺に全体重をかけるかのように俺にもたれかかってきている。
一体、柚香は何を考えているんだ……。
そんなにされたら俺もう……。
俺は振りかえって柚香を見た。
ずっと、ずっと好きだった柚香。
俺は柚香を抱きしめ返した。
「……あったかい」
柚香は俺の顔をじっとみつめた。
そして目を閉じた。
触れたい……。
柚香をもっと、感じたい。
俺は顔を柚香に近付けた。
その時だった。
車のクラクションの音が大きく響いた。
俺と柚香は思わず離れた。
しかし、周りを見回しても車どころか人一人いなかった。
一体どういう……。
『一応裏に車を止めておくから』
もしかして舞子さんが……。
というか一体俺は何をしようとしていたんだ……。
あのクラクションがなかったら俺は……。
間違いなく柚香とキスをしていた。
「ツバキ……?」
「今日は帰ってくれないか」
「でも……」
「帰ってくれないか!!」
「……うん」
柚香は無理に作った笑顔で頷くとそのまま歩いて行った。
本当は送っていきたい。
けどそしたら、俺は必ず柚香と一線を越えてしまう。
そしたらダメだ……。
ここは黙って、見送るのが一番なんだ。
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