4.揺れる気持ち

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* 「なるほどねぇ……。 柚香ちゃんと喧嘩してそのまま別れた、と」 友希が腕を組んで考え込んでいる。 「大宮先輩はどんな感じで……その……」 友希はとても聞きにくそうだ。 大宮先輩はカクテルを1口含んでから吐き出すように言った。 「他に好きな子が出来た。ですって。 そこはツバキと似てるかもしれない」 大宮先輩は苦笑した。 「そんな理由で振るなんて勿体ない。 俺だったら大宮先輩を……」 「そんな理由でも、その人からすれば大きな理由なのよ。 きっとそれは、その人にしか分からないのよ」 そういう大宮先輩は寂しそうだったけど、どこか強い目をしていて……。 少し、羨ましかった。 どうしたら俺にもそんな目が出来るようになるんだろう。 「おおっと、ツバキ、酒が足らないんじゃないのか? ホラホラ、もっと飲めって」 佐伯先輩が俺の空いたジョッキに並々とビールを注いだ。 「佐伯先輩、俺、ビール苦手で……」 「関係ないよ、そんなの」 いつもは佐伯先輩の無茶ぶりを優しく制してくれる大宮先輩が、 ジョッキを持つ俺の手を握った。 「全部飲みこんじゃいなよ。 寂しい気持ち、悲しい気持ち、辛い気持ち。 全部飲んじゃえ」 「大宮先輩……」 「そうだぜ、ツバキ」 友希も大宮先輩の言葉に続いた。 「振られたのは辛いよな。 けどこの先、もっと辛いことはある。 これくらいで凹んでちゃ人生損するぞ」 「友希の言う通り。 逆に振られた奴が幸せになればいいんだよ。 見返してやれよ。地団太踏ませてやれ。 ま、俺にはこういうことしか出来ないけどな」 佐伯先輩はニッと笑うと、持っていたビールを一気に空けた。
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