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「夏奈、梓ちゃん、こういうこと言われたらどう思う!?」
「また質問ですか? くどいですよ」
うんざりした様子で夏奈はため息をつく。
「大体、最近遊び過ぎだったんですよ、先輩は」
梓ちゃんも口を尖らせる。
気付けば、締め切りまで2週間を切っていた。
俺の恋愛小説はネタが出てこなく、後半のシーンが白紙の状態だった。
「でも私、ツバキ先輩の作品好きですから答えてあげます」
「私も時給1000円でいいですよ」
……梓ちゃんの言葉はあくまで冗談と受け取っておこう。
俺は今回、後輩キャラの心情を深く描きたかった。
その為、この2人に色々聞いておきかった。
「まずどんな作品なんですか?」
俺は2人に今回の作品について簡単に説明した。
テーマは先輩と後輩の恋。
「なーんか、その後輩、夏奈に似てません?」
ざっと話し終えた後、梓ちゃんは言った。
「そうかな?」
書いている時は全く意識してなかったんだけどな。
もしそうなら返って丁度いいかもしれない。
「じゃあその夏奈に聞こうかな?
この先輩のこと、どう思う?」
「言葉だけ、ですね」
「言葉だけ?」
俺が聞き返すと、夏奈はバッグから赤ペンをとりだした。
そしてあるセリフに印を付けた。
「『大切な物は失ってから大切って気付く』
そんなの私、間違ってると思うんです。
失ってから気付くなんて、そんなの大切なんかじゃない。
まやかしです、酔ってるだけです。
本当に大切なら……」
夏奈は赤ペンを俺に向けた。
「初めから、大切って気付いてるはずですから」
「……そんなの大切に決まってるんじゃ?
それで、失って打ちひしがれてるんじゃ?」
「そこです、この物語の先輩の悪い所は。
目を背けてるんです、現実から。
どうして俺らはこうなったのか。
そこを考えてないんですよね」
その夏奈の言葉は、妙に俺の気持ちをつついた。
俺は柚香を失って、その大切さに気付いた。
それで頭がいっぱいだった。
『こんなに好きだったのに……どうして』
そこで思考をやめ、立ち止まったままだった。
だけど、この前舞子さんに引っぱたかれて目が覚めた。
いや、考えることを再開した。
泣いてばかりじゃなく、泣きやんだ時のことを考えてなかった。
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