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「……ありがとう、夏奈、梓ちゃん」
俺がお礼を言った時、部室の扉が開いた。
麻里と柚香が入ってきた。
「おっ、後輩2人はべらせて楽しそうだね、ツバキは」
「ばーか、取材だよ取材」
柚香は俺の方を一瞬見たが、すぐに目をそらした。
「……柚香はもう、出来たのか?」
「も、もう少しかな」
俺は勇気を出して柚香に声をかけてみる。
ぎこちなくだけど、ちゃんと返してくれた。
部室で話すのは2年になってから初めてかもしれない。
「ツバキ」
その時、大宮先輩に呼ばれた。
俺はもう1度、夏奈と梓ちゃんにお礼を言ってから、大宮先輩の所へと向かった。
「何ですか?」
「一応、自分の中での区切りは出来たみたいね」
大宮先輩は優しく微笑んだ。
そう見えてたのかな。だとしたら嬉しい。
迷うこともあるかもしれない。
悩むこともあるかもしれない。
だけど、もう負けたくない。
俺は一人じゃないから。
「……そんなことで呼んだんですか?」
「それもあるけど、本題はこっち」
大宮先輩は段ボール箱を開けた。
「これ、あなたが言ってた柊 舞子さんじゃない?」
大宮先輩が手に持つ写真には確かに舞子さんが写っていた。
「これ……」
「ちょっと掃除してたら出てきたの」
俺は舞子さんの横に立つ男が気になった。
その指には舞子さんとお揃いの指輪がはめられていた。
この人もしかして、舞子さんの彼氏だったのだろうか。
舞子さんは今は彼氏はいないと言っていた。
ということはこの人は別れたということなのか?
『アンタのことは誰よりも分かるよ』
舞子さん、何があったんだろう。
疑問は深まっていくばかりだった。
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