4.揺れる気持ち

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「それで何で謝ったんだ?」 「ゆずの親友として、かな? 特に意味はないけど……なんかごめん」 「だったら謝るなよ。 俺は別に麻里も柚香も恨んでないよ」 「……ありがと。じゃあ私も帰るね。 明日までには書きあげてね」 俺は麻里に手を振った。 だが、麻里は部室の前でピタッと足を止めた。 「でも柚香。 今度は私の前で彼氏の話しないの」 「麻里……?」 「なんてね、だからどうしたって感じなんだけど! じゃあまた明日!」 麻里はそのまま部室から出ていった。 ……麻里は一体何を伝えたかったんだろう。 まるで……。 『もう1度、柚香と付き合って欲しい』 そう言っているような気がしてならなかった。 ……考え過ぎだよな、うん。 だけど柚香、幸助と上手くいってないんだろうか。 『久しぶりにゆっくり空、見た気がするよ』 ふと、前に講演で聞いた柚香の言葉が頭をよぎる。 ……柚香、お前、大丈夫なのか? 結局、麻里が帰ってから1時間程で原稿は完成した。 「終わったぁ……」 俺は大きく伸びをする。 この達成感、開放感がたまらない。 俺は出来あがった原稿をバッグに詰める。 戸締りを確認してから俺は部室を後にした。
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