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「遅いぞ、ツバキ」
友希が小声で話しかけてくる。
俺と夏奈が着いたのは定例会が始まる5分前だった。
夏奈は俺から離れて、梓ちゃんと柚香の間に座った。
夏奈は梓ちゃんにぬいぐるみのことを突っ込まれているみたいだった。
急いでいたから袋をもらうのを忘れていた。
「夏奈ちゃんと一緒にいたのか?」
「たまたま休講が重なってな」
「なーんかお前ら付き合ってるみたいだな。
あんなぬいぐるみまで取ってよ」
友希がニヤニヤと笑う。
「ば……付き合ってなんかねーよ」
「そんなムキになるなって。
俺は応援してるからな」
俺、そんなムキになって否定したのだろうか……。
確かに夏奈のことを意識していないと言ったら嘘になるのかもしれない。
初めて泊まったあの日から、何かと夏奈と過ごす時間が多い。
意識しない方が無理なのかもしれない。
「定時になりました、これより定例会を始めます」
凛とした大宮先輩の声が部室に響いた。
「今日の話題は夏の合宿です」
その言葉を受けて教室はざわめきだした。
主に1年生が中心だった。
「静かに。
我が文芸部では毎年8月の上旬に合宿を行っています。
まぁ、合宿という名の遊びみたいなものですが」
大宮先輩はそこで一回言葉を切ると大きな声で叫んだ。
「お前ら遊びに行くぞおおおお!!」
一瞬間があったが、部員皆がこの声に呼応した。
大宮先輩は恥ずかしそうにしていた。
毎年、この掛け声を言うのがこの部のきまりとなっているようだ。
友希は今の言葉の余韻をかみしめているようだ。
それにしても合宿か……。
今からテンションあがってくるな。
俺は坂井達とずっと合宿について話しあっていた。
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